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| 「きのこ山の夢」(山本マリ夢日記より) 主人は突然、仙人の住む山へ行くと言う。その山は麓から見るにはたいへん美しい山なのだけれど、はるか高く道険しく、素人が簡単に足を踏み入れられるような山ではないので、きっと主人は遭難してしまうだろう。私はやめるように懇願したけれど、ガイドを連れて行くから、とか、危なければすぐ帰ってくる、とか、説得され、ついに主人を見送ることになってしまった。 山には特殊なきのこが生えている。主人はそれを使ってカバンを作るのだそうだ。仙人の気を帯びたきのこは、丈夫でツヤがあって、どのブランドにも負けない高級なカバンになる。 主人が山へ行ったその夜は食べず、動かず、寝ず、ただひたらすら無事を祈った。 朝方になって、戸口で音がするので、出てみると、昨日山へ行ったばかりの主人が平然とそこに居て、きのこを新聞紙の上に並べていたりするので、私はすっかり拍子抜けしてしまい、それと同時に何だか腹が立ってしまった。 私の憤慨をよそに、きのこで作ったかばんは評判良く、口コミで噂も広がり、1つ何百万という値段で、どんどん売れていった。主人はすっかり忙しくなってしまい、休みもとらずかばんばかり作っているので、私の不機嫌は一向に治らない。 夫婦の会話もなくなって、一つ屋根の下ながら、お互いがただそれぞれに、そこに居るだけになってしまった頃、また突然に、主人は訴えられた。 謀ブランドメーカーが、主人のカバンを模造品だと訴えたのだ。私はまさかと思ったけれど、何と模造品は事実であったらしい、主人は裁判に負けてしまい、おかげてカバンの販売ができななった。 周囲の人は、もうすっかり儲けたのだから…と慰めてくれるけれど、大量の在庫をかかえてしまい、家中、きのことかばんだらけなってしまって、実際は実に惨憺たる状態だった。しかし私は、その中でしょげかえっている主人を見ると可笑しくて、その頭を「突然なことばかりするからよ」と言いながらはたいたりしていると、何だかすっきりした気分で、ハハハと笑いばかりがこみ上げるのだった。 |